「実現したいのは、事業戦略とともにあるマーケティング」:パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社・山口有希子氏 – DIGIDAY[日本版]



パナソニック株式会社は2017年12月1日、その社内分社のコネクティッドソリューションズ社に、B2B向けマーケティングを統括するエンタープライズマーケティング本部を新設。本部長として、日本IBMでデジタルコンテンツマーケティング&サービス部長を務めた、山口有希子氏が移籍・就任した。

日本IBM以前にも山口氏は、シスコシステムズをはじめ、オーバーチュア、ヤフージャパンなど、国内外の企業で20数年に渡り、マーケティングコミュニケーションに従事。また、JAA(日本アドバタイザーズ協会)でも国際委員会の委員長を担当し、2018年5月には「WFA(世界広告主連盟)グローバルマーケターカンファレンス2018」の日本初開催も控えている。

「企業戦略とともにあるマーケティングを実現したい」と、移籍の理由について語る、山口氏。今後の抱負について、「パナソニックは2018年、創業100周年を迎える。次の100年のビジネスに貢献していきたい」と述べた。

今回、DIGIDAY[日本版]では、そんな山口氏に、新天地における展望を聞いた。

◆ ◆ ◆

――まずは、山口さんのミッションを教えてもらえますか?

パナソニックは家電を中心としたB2C企業のイメージが強いという現状があります。これまでもB2B事業はやってはいたのですが、やはり家電製品を中心としたB2C向け製品のイメージが強く、表舞台に立つことが少なかった。しかし、実は知られていないだけで、B2B事業においても弊社の製品はさまざまなところで使われているんです。

そんななか、樋口(パナソニック株式会社取締役専務執行役員/コネクティッドソリューションズ社社長:樋口泰行氏)のもと、まずは2017年4月に、B2B事業を拡大するために、パナソニックの社内分社としてコネクティッドソリューションズ社が設立されました。今回新設されたエンタープライズマーケティング本部は、その取り組みのひとつとして、B2CでもB2B2BでもB2B2Cでもない、B2B領域のマーケティングを加速させるために発足されました。それが、私のミッションといえるでしょう。

――エンタープライズマーケティング本部の運営方針は?

本来マーケティングは、セクションごとに個別最適で行うものではなく、事業として何を目指して、何をやっていくのかを固めて社内外に発信しなければなりません。そのうえで、事業をトランスフォーメンションさせるために、企業カルチャーを作ったり、ブランディングも含めて行なっていくのが定石です。

しかし現状は、部門ごとに個別最適なマーケティングになっている。そうなると、どうしてもその部署のセールスプロモーションに一生懸命になってしまいがちです。それでは会社としてのコミュニケーションが難しい。

B2B領域でのソリューションビジネスを強化するために、いま必要なのは「面」としてのコミュニケーションを社内外で展開していくことです。本来、面として統一感を持ったメッセージとブランディングがベースにあったうえで、それが個々の事業部の取り組みと連携しているのが理想。そういった企業のあり方を作っていけるようなコミュニケーションが重要なんです。B2B事業として何をやっていくかという統一されたメッセージを、きちんと社内外に発信して、ビジネスのドライバーになることが、エンタープライズマーケティング本部の運営方針です。

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――日本IBMでの経験は役に立っていますか?

現状、B2Bのマーケティングに本格的に取り組んでいる企業って、日本では多くはないと思います。これまでを振り返ってみると、かれこれ25年間さまざまな企業のB2Bマーケティングに携わってきましたが、その重要性はどの企業においても同じだと思っているので、日本IBMも含め、これまでの経験は役に立っていますね。

あと、前職のときもそうですが、マーケティングは事業戦略と結びつく必要があるということを痛感していて、そういった面でも貢献ができるのではないかと思います。実際、移籍する際に社長の樋口だけでなく、現在、事業戦略とエンタープライズマーケティングの両方を見ている副社長の原田(コネクティッドソリューションズ社副社長:原田 秀昭氏)とも話をしたのですが、事業戦略に基づいたエンタープライズマーケティング本部の役割について議論ができたので、とても有意義でした。

いま、コネクティッドソリューションズ社として行っているのは、事業のトランスフォーメションのための風土改革です。本社機能を移したり、コミュニケーションの取りやすいオフィス作りなどを行い、働き方改革にも取り組んでいます。これをベースに改革を進め、継続性のあるビジネスモデル作りに取り組んでいきます。そこにいかにマーケティングが関わっていくかが重要だと思っています。

――チームの体制を教えてください

人数としては現状22名体制ですが、近いうちに増やしていきたいと思っています。いまは広報、展示、ショールーム、Webなど、もともとあった組織を集約して、ヒアリングを行いながら今後の方向性をチームでプランニングしている、という段階です。

あと、マーケティングに関係する部署へのヒアリングや、コネクティッドソリューションズ社内の主要な事業部からのブリーフィングを受けたり、工場の現場にも足を運んだりしています。実際に現場へ赴いてみると、いろいろな発見があって面白いですよ。

弊社の製品には、一般的には知られてないけど、実はさまざまなところで使われているものが多いんです。そういった、いままでフォーカスされていなかった部分を発見できたのは、とても良かったですね。B2Bなので、目立ちにくいというのはもちろんあるんですが、それをしっかり社内外に伝えて、ビジネスをドライブできるようなマーケティングを実施していきたいです。

――山口さんが感じたパナソニックの強みは?

やはり現場に強いところです。創立からの100年の歴史のなかで、実際にいろんなお客様の現場を見て、自分たちで設計からメンテナンスまでを一貫して支えてきているわけですから。私たちが掲げている「『現場お役立ちのトータルインテグレーター』へ。」というテーマを実現できるだけのポテンシャルを持っているなと感じました。あと、松下幸之助の時代から脈々と日本のモノづくりを支えているという想いやプライドがありますね。

そういった強みを生かしつつ、企業としてさらに成長していくための課題を見つけて、社内に認知させることも私の仕事だと思っています。とはいえ、まずは1月4日に走り出したキャンペーンも含めて、新しいことをいかに成功させるか、というところに注力していきたいです。

――そのキャンペーンの内容は?

「『現場お役立ちのトータルインテグレーター』へ。」キャンペーンは、さまざまなメディアでプロモーションを行っていく予定です。まずはフリーアナウンサーの夏目三久氏を起用した、テレビ東京の経済情報番組「ワールドビジネスサテライト」でのテレビCMを皮切りに、段階的に露出を増やしていきます。今回のCMでは、先ほどお話したような、これまであまり目立たなかったけれど、実はさまざまな現場で役立っているパナソニック製品を見ていただくことができます。

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B2Bマーケティングにおいてここまで本格的なプロモーションを行うことはパナソニックでは希だと思うので、大きな挑戦だと思っています。また、今回のキャンペーンは、社内も含めた全ステイクホルダーへの、本気で「『現場お役立ちのトータルインテグレーター』へ。」というテーマを実現して提供していくことにコミットしますよ、というある種の宣言でもあります。B2B事業としての方向性や、なぜそれが可能なのかという論拠をしっかり明示して、信頼性を勝ち取れるように取り組んでいきたいですね。

――では、山口さんが考えるマーケティングのあるべき姿とは?

私が実現したいのは、企業戦略とともにあるマーケティングです。この会社に入ったのも、それができると思ったからです。もちろん、セールスの現場、モノづくりの現場との連携です。そこが事業を支えているわけですから。本当に事業を支えるマーケティングをやっていくためには、彼らとコラボレーションしなければならない。そこも大切にしていきたいですね。

――2018年はどのような年にしていきたいですか?

2018年はパナソニック創業100周年の年になるので、エンタープライズマーケティング本部を、次の100年に貢献できるような、ビジネスをドライブできる組織にしていきたいと思っています。

これまでパナソニックは、B2C分野の企業として認知をされることが多かったなかで、これからはB2B、B2C関わらずパナソニックのブランドを盛り上げていかなければならないと思っています。社内で話をしていると、B2Cの色が強すぎるのが課題だ、という話が出ることがあるんですが、私はむしろそれは強みだ思っています。すでに、消費者にポジティブなブランド認知をされているという土壌があるので、そのうえでやっていけるというメリットはとても大きいですね。

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▼山口有希子
パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社
エンタープライズマーケティング本部長

91年リクルートコスモスに入社。その後、商社にて各種海外プロジェクトや海外IT関連製品の輸入販売・マーケティングを実施。 企業のマーケティングコミュニケーションに20年以上従事。シスコシステムズ、オーバーチュア、ヤフージャパン、日本IBMのマーケティング管理職を経て、2017年12月より現職。日本アドバタイザーズ協会 理事、国際委員会 委員長。デザイン&テクノロジー協会 理事。

Written by 村上莞
Photo by 渡部幸和




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