「空の産業革命」 – ドローンの光と影 – マイナビニュース



ドローン(マルチコプター)の宣伝文句にだまされないために

ドローン(マルチコプター)には様々な長所や特長があると言われている。その多くは誤りではないものの、抽象的で誤解を招く表現が少なくない。そして隠された弱点がいくつも存在する。今回からは、こういったマルチコプターの問題点と対応策をいくつかご紹介したい。

今回は、製品カタログで公表されている弱点と、比較的分かりやすい問題点を一部、解説しよう。

航続時間の短さと曖昧さの問題

マルチコプターの弱点として指摘されるのが、航続時間(飛行時間)の短さである。機体の重量や貨物の重量などにもよるが、マルチコプターの航続時間は、長くても30分くらいにとどまることが多い。目的地までの往復に20分かかるとすると、例えば目的の空中撮影に割ける時間は10分弱にとどまる。この条件だと、目的地に10分以内に到達可能な位置を、出発地に選ばなければならない。

そもそもマルチコプターは、内燃機関を積んだ無人飛行機(固定翼機)とは違い、長距離の飛行には適していない。電気モーターを二次電池(バッテリ)で駆動する方式のため、バッテリの容量によって飛行時間が制限される。現在のバッテリ技術では、長時間の飛行は不可能に近い。

マルチコプターを視認しながらの有視界飛行であれば、目的地までの飛行距離は長くない。マルチコプターのカメラが撮影した映像を視認しながらの一人称(FPV:First Person View)飛行でも、操縦者が見える範囲での飛行が基本なので、目的地までの飛行距離があまり長くなるとは想定しづらい。いずれにしても、飛行時間の制限を受容してフライトすべきだろう。

実際の問題は航続距離の短さではなく、バッテリの使用量(消費量)が分からないことだろう。マルチコプターの操縦に夢中になっている間にバッテリが切れ、マルチコプターが落下したり、あるいは操縦不能になったりするような事態は何としても避けたい。とはいうものの、現在はテスト条件の標準仕様が存在していない。さらに、テスト条件を明記して航続時間を表記した例は見られない。

バッテリの消費量と残容量を推定する方法の1つは、実際に機体を飛行させることだ。飛行といっても空中停止(ホバリング)状態を保つ。例えば3分間程度のホバリングであれば、バッテリを使い切ってしまうことはまず、考えられない。

初めにバッテリ(普通はリチウムポリマ二次電池)を充電しておき、バッテリ・チェッカーで電圧と容量を測っておく。マルチコプターを一定の時間だけホバリングさせた後で、バッテリ・チェッカーで再び、電圧と容量を計測する。これで、単位時間当たりのおおよその消費量が分かる。

マルチコプターの問題点と対応策

機体挙動の把握と操縦者の練度

マルチコプターを含めた無人航空機の本質的な弱点は、機体の細かな挙動を操縦者が感知できないことにある。機体と操縦者が切り離されているからだ。したがって機体の微妙な挙動に対して操縦者が適切な操作を加えることが難しい。

機体の姿勢の変化や機体の振動などには、内的要因(操縦)に起因するものと、外的要因(気流)に起因するものがある。有人航空機では、操縦者がこれらの要因を比較的簡単に見分けられる。そもそも有人航空機では、操縦者は操縦免許の保持者であり、素人ではない。無人航空機とは前提が違う。

ただし、墜落しても搭乗者の人命が損なわれない(搭乗者が存在しない)のが無人航空機の最大の長所なので、機体の細かな挙動を操縦者が把握できないことは、受容すべき弱点だと言える。すると問題は、操縦者の技量になる。

日本にはマルチコプターを対象とした免許制度が存在しない。まったく操縦経験の無い初心者がマルチコプターを飛行させることが可能である。この状態は危険だ。マルチコプターは簡単に飛ばせる代わりに、簡単に操縦不能に陥る。気象条件が穏やかな屋内であっても初心者の操縦だと、操縦不能に陥る可能性は低くない。

操縦不能に陥った後に、墜落して機体だけを損傷するという事態は、実は不幸中の幸いと言える。なぜなら、被害を被るのは所有者だけだからだ。怖いのは、操縦不能に陥った機体が他者や貴重品などに接触することである。

このような危険性を軽減する最も有効な手段は、パソコン(PC)で動くシミュレーション・ソフトウェアの活用だろう。マルチコプター用のフライト・シミュレータがすでにいくつも存在する。簡単なリモコン(例えばゲーム・コントローラ)で操作する簡易的なシミュレータ、ラジコンヘリ用の多チャンネル・プロポで操作する本格的なシミュレータなどがある。マルチコプターの販売セットに練習用のフライト・シミュレータが添付されていることもある。

ホビー用の軽くて小さなマルチコプターを自宅のリビングルームで飛ばすのだから、いきなりでも大丈夫、というのは大きな間違いだ。自宅の屋内でドローンを飛ばして操縦不能になったときに起こる代表的な悲劇は、家族の頭髪(特に長い髪)にプロペラが絡まることなのだ。家族から「ドローン廃棄命令」が出てしまうような事態は、絶対に避けたい。

マルチコプターの問題点と対応策(続き)

(続く)




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