JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに? – 4Gamer.net




 2017年12月12日,液晶パネルメーカーのジャパンディスプレイ(以下,JDI)は,東京都内にて製品発表会を開催し,VRヘッドマウントディスプレイ(以下,HMD)専用という新型液晶パネルを発表した。3.6インチサイズで解像度1920×2160ピクセル,画素密度が803ppi(pixel per inch)という高精細さが特徴だ。
 VR HMD専用を謳うこの液晶パネルは,既存のVR HMDが使う液晶パネルや有機ELパネルと何が違うのか,発表会で明らかになった概要をレポートしよう。

VR HMD専用液晶パネルを使ったHMDを想定したデモ機。VR映像を覗き込むためのものなので,被って動いたりはできない
JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに?

2枚並べると4K解像度の超高精細IPS液晶パネル

 4Gamer読者には,JDIという企業を知らないという人もいそうなので,まずは簡単に同社について説明しておこう。
 JDIとは,ソニーや日立製作所,東芝,パナソニックといった国内電機メーカーにおける液晶パネルの開発や製造部門を統合したディスプレイパネルメーカーだ。鴻海精密工業の傘下に入ったシャープを除く,国内に残っていたパネルメーカーのほとんどを束ねて作られたため,「日の丸ディスプレイメーカー」とでも言うべき企業である。

 JDIは,テレビやサイネージ用の大型液晶パネルではなく,小サイズで高精細なモバイル機器向けの液晶パネルを主力商品としており,小サイズ液晶パネルにおける市場シェアはそれなりに大きい。一般消費者向けの製品で言うと,Nintendo SwitchやiPhoneシリーズが,JDI製液晶パネルを採用する代表事例といったところか。そんなJDIが,“VR HMD専用”という触れ込みで,新しい小型液晶パネルを発表したというわけだ。

VR HMD専用液晶パネルの説明を担当した原山武志氏(JDI ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ第1事業部 商品部 応用技術1課 課長)

 説明を担当したJDIの原山武志氏によると,VR HMD専用液晶パネルは,冒頭で触れたとおり3.6インチサイズで解像度1920×2160ピクセル,正方形よりはわずかに縦長の形をしたIPS方式の液晶パネルで,画素の配列はRGBストライプ配列であるという。このパネル1枚が片眼用で,2枚を左右に並べてゴーグル内に組み込むことで,VR HMDを構成するという仕組みだ。
 最大垂直リフレッシュレート(フレームレート)は90Hzで,中間調応答速度は,IPS型液晶パネルとしては最速レベルという4.6ms。しかも,「オーバードライブ駆動は用いずに,この速度」を実現していると,原山氏は明言していた。

 このパネルでVR HMDを構成すると,両眼分で描画するピクセル総数は3840×2160ピクセルとなり,いわゆる4K解像度と等しくなる。近い将来のハイエンドGPUであれば,4K解像度のVRコンテンツを90Hzで描画することも,無理難題ではないだろう。

JDIが発表したVR HMD専用液晶パネルのスペック
JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに?

 表現可能な色域は,「xy色度図上での70%をカバー」とのこと。液晶ディスプレイのスペックで見かける「sRGB色空間カバー率が何%」といった表現での説明はなかったが,説明どおりなら,sRGB色空間カバー率にして100%以上なのは間違いないだろう。

 最大輝度は150nit(=150cd/m2)。一般的な液晶ディスプレイが250〜300nit程度なのに比べると低い値だが,これはVR HMDでは目に近い位置で表示するので,高い輝度である必要がないためである。
 ネイティブコントラスト比は700:1と,こちらも1000:1程度が一般的な液晶ディスプレイに比べると低い。これはIPS型液晶パネルであるためとのことだった。なお,バックライトシステムはエッジ型で,画面全体を明滅させるバックライト制御の全面黒挿入にも対応するという。

 原山氏は,パネルの価格がいくらになるかを説明しなかったが,スペックからして,相応に高価な物なのは間違いない。しかし,「両手では数え切れないほどの顧客を,すでに得ている」(原山氏)とのことで,量産の準備は万端であることに自信を示していた。
 ちなみに,VR HMDのメーカーからは,今回のVR HMD専用液晶パネルよりもさらに高解像度なパネルを求める声もあるようで,JDIは,2019年頃のリリースを目標に,さらに高精細な1000ppi級の液晶パネルを開発中ということだった。

VR HMD専用液晶パネルの開発ロードマップ。2019年頃には1000dpiに到達する見込みだそうだが,対する有機ELパネルは,現状でも800ppiに達していないし,2019年に1000ppiに達する見通しもない
JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに?

高解像度化は液晶パネルが有利

応答速度や残像感も実用に耐えうるレベルを実現

分解したPS VRのレンズユニット(左)と有機ELパネル(右)
JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに?

 PlayStation 4用のVR HMDである「PlayStation VR」(以下,PS VR)をはじめとして,HTCの「Vive」,Oculus VRの「Rift」のいずれも,ディスプレイパネルには有機ELパネルを採用している。そのため,VR HMD用のディスプレイパネルと言えば,有機ELパネルが主流という印象が強い。実際,原山氏も,「ネイティブコントラスト性能や応答速度の面では,有機ELパネルに優位性がある」と認めてはいる。
 その一方で原山氏は,「より高解像度の映像パネル製造においては,やはり液晶パネルに優位性がある」としたうえで,「接眼レンズで拡大して見るVR HMDでは,同一ドットピッチのパネルで比較した場合,画素開口率の高い液晶パネルのほうが,格子感の少ない映像が楽しめる」のが利点であるという。
 そして,この利点を生かせば,VR HMD市場においても液晶パネルが有機ELパネルに勝つ可能性はあるというのが,JDIの見方というわけだ。

 液晶分子の配列を制御し,その旋光性を利用して表示を行う液晶パネルは,その仕組み上,応答速度において有機ELパネルを上回ることは,物理的にありえない。しかし原山氏は,「現行(のVR HMD専用液晶パネル)でも90fpsに対応済みであり,将来的には120fpsに完全追従できる液晶パネルの開発に目処が付いている」として,「VR HMDでの実用上,(応答速度で)問題が出ることはない」と主張する。
 また,バックライト制御による黒挿入によって,残像感も十分に低減できるとのことだった。

黒挿入で残像感を減らす技術は,とくにテレビ用途では珍しいものではないが,JDIのVR HMD専用液晶パネルは,消費電力の制約が大きいモバイル機器クラスのパネルで,黒挿入を実現しているのがポイントであるという
JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに?
通常の表示(写真左)と,高フレームレート×黒挿入(写真右)による表示を比較したデモ。写真で見ても意味はあまりないが,左側は残像が見えるものの,右側は見えないというものだった
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「画素の格子」を感じさせないVR映像に感動

 さて,発表会場では,今回のVR HMD専用液晶パネルを組み込んだVR HMD試作機によるデモを体験できた。VR HMD試作機といっても,今回はあくまでも映像の精細さや残像感の少なさを体験するものなので,台座に固定したデモ機のゴーグルを覗き込むだけで,頭に被って動き回ることはできない。

 デモ機の映像は,非常に解像感の高いもので,液晶パネルの画素間にある隙間が格子のように見える“格子感”は,かなり少ない。残像感の少なさもポイントだ。筆者が見たところ,バックライト制御による黒挿入の効果もあってか,映像が高速でスクロールしても残像感は感じなかった。

 既存のRiftやViveは,片眼あたりの解像度が1080×1200ピクセル,PS VRは同960×1080ピクセルなので,同1920×2160ピクセルというVR HMD専用液晶パネルの解像感は段違いだ。
 そもそも,RiftとViveの有機ELパネルは,画素の配列がペンタイル(千鳥足配置)方式なので,もともと解像感が低い。PS VRはRGBストライプ配列なので,スペックのわりに解像度が高く感じられるが,JDIのVR HMD専用液晶パネルは,そのPS VRより4倍も画素数が多いのだ。高精細に見えるのは当然と言えば当然である。

VR向けディスプレイパネルの精細感を比較した写真。左端がソースの写真で,左から2枚目は400ppi,右から2枚目は600ppiの従来型液晶パネルで表示した状態を拡大したもの。右端がVR HMD専用液晶パネルで表示した状態だ。精細感の高さや格子状の模様が見えないことが分かる
JDI,画素密度約800ppiのVR HMD専用超高精細液晶パネルを発表。第2世代VR HMDは有機ELではなく液晶がメインに?

 デモを体験した限りでは,JDIの主張どおり,有機ELパネルから大きく見劣りする印象はない。だからこそ,「両手では数え切れないほどの顧客」を獲得できているのであろう。

2018年以降に登場する次世代VR HMDは液晶がメインに?

 最近,ディスプレイパネル業界に流れている噂では,2018年以降に登場するであろう第2世代のVR HMDでは,液晶パネルを選択する製品が増えるだろうと言われている。今回,JDIが発表したVR HMD専用液晶パネルは,この噂にある程度の信憑性があることを裏付けたように思える。
 現行のVR HMDは,片目あたりの画素数が約100〜約130万画素程度だ。しかし次世代VR HMDが求めるパネル解像度は,その2倍でも少ないという。GPU性能の向上も考慮すると,画素数は現在の3〜4倍というのが適当と見込まれている。
 RiftやViveのパネルサイズは3.5インチだ。ここで高画素化のために大型のディスプレイパネルを使おうとした場合,接眼レンズの光学設計も改めなくてはならない。既存の光学設計をベースとして,パネルサイズを現在のVR HMDから大きく変えることなく画素密度を3〜4倍に上げるには,JDIの新パネルが達成した3.6インチで800ppiというスペックは,実に理想値に近いものなのだ。

 それに対して,800ppiの画素密度を有する有機ELパネルを量産するのは,現状では難しい。RGBストライプ配列の画素構造を採用するものは,とくに難しいという。ppi競争において,有機ELパネルは液晶に対して,一歩も二歩も遅れているのである。

 2018年以降は,PCと接続するタイプだけでなく,オールインワン型のVR HMDも,さまざまな製品が登場してくるだろう。それらの製品が,液晶パネルを採用するのか,それとも今までどおり有機ELパネルを採用するのかは,近いうちに分かるはずだ。JDIの発表したVR HMD専用液晶パネルは,その未来を占ううえで,重要な意味を持っていると言えよう。




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