郷愁誘う港町のにぎわい 芸術作品の中の「神戸港」 – 神戸新聞



 神戸港は1868年1月1日に開港し、国際貿易港として発展した。開港150年を記念し、近現代絵画や版画でその魅力に迫る特別展「神戸港コレクション」(神戸新聞社など主催)が、神戸ゆかりの美術館(神戸市東灘区向洋町中2)で開かれている。神戸モダンを代表する版画家・川西英(ひで)による水彩画「神戸百景」を中心に約250点を展示。戦前・戦後の港町のにぎわいと変遷が描かれ、ノスタルジックな雰囲気が会場を包む。(堀井正純)

 長崎港(長崎市)、清水港(静岡市)とともに「日本三大美港」とも呼ばれる景観を、美術家たちはどう捉えたか。同館の金井紀子学芸員によれば、画家たちが好んだ視点・構図はおおまかに三つという。

■三つの構図

 一つは海からの港や街の情景。背後の六甲山や海辺の近代建築などを題材に、異国情緒と自然美とを表現した。日本画の名匠・池田遙邨(ようそん)による「雪の神戸港」は、海上を飛ぶ鳥の目線で画面を構成。南画の趣もある佳作だ。雪の白と海の青の対比、自然の山や天候と巨大船という人工物の対比が面白い。

 二つ目は高台や山からの遠望。戦後なら神戸ポートタワーや人工島ポートアイランドなどが特徴的なモチーフとなった。

 残る一つは、突堤や波止場、港近くの建物からの眺め。経歴不明の画家Y・コジマによる1938年制作の油彩画の大作「神戸港眺望」がその典型だ。横長の画布に、昭和初期の港の繁栄を活写する。神戸市立博物館による調査で、大阪商船神戸支店(現商船三井ビル)の5階にあった生糸輸出会社の事務所から見た図と推測されている。画面手前は萬国波止場(メリケン波止場)。港内には軍艦や貨物船、パイロット・ボート、はしけが停泊し、行き来する。

 ひときわ目立つのは、煙突から煙をたなびかせた大型船の雄姿。神戸と台湾を結んだ貨客船「富士丸」だ。遠景には、川崎造船所(現川崎重工業)の名物だったガントリークレーンも。極めて詳細、リアルな描写で、歴史資料としての価値もあるという。

 また安井賞画家・西村功氏が戦後に描いた「ポートアイランドと神戸」は、近代と現代を対比し、つなげるかのように人工海上都市と趣ある北野の異人館とを同じ画面内に構成。明るくさわやかな雰囲気が漂う。日本画家・西田眞人氏は「輝く街」で、電飾に彩られたクルーズ船や観覧車など、神戸ハーバーランドの夜景を情感豊かに再現。光の中に、地元画家ゆえの、震災を乗り越えた「わが街」への思いがにじむ。

■戦後復興の街

 展示の目玉は、一昨年、約半世紀ぶりに見つかった川西の水彩画集「神戸百景」の原画100点だ。川西は戦前に木版画で「神戸百景」を制作しており、今回出品された戦後の「神戸百景」は「新神戸百景」とも呼ばれる。

 1952~53年に、地方紙「神港新聞社」の依頼で制作。62年に1500部限定の画集として刊行されたが、その後、原画が所在不明となっていた。

 描かれているのは、神戸大空襲で焼け野原となり、復興した街。木版画にしたかったが、体力面の問題などから、水彩画となったという。色数を抑え、写実性を残しつつも大胆な省略や、色による面的表現を多用し、木版画に似た温かな味わいに仕上げた。

 「税関前」「メリケン波止場」「神戸沖」「観光団上陸」など、港の様子もさまざまな形で登場する。モダンで明るく、どこか優しい色合い。震災後の西田氏の絵と同様、川西作品にも、神戸に生まれ育った作家が、戦災という苦難から立ち直りつつある故郷へ寄せた愛や希望を読み取ることができる。

 2月18日まで。2月12日を除く月曜と同13日休館。一般800円、大学生600円、高校生450円、小・中学生300円。六甲ライナー「アイランドセンター駅」下車。同美術館TEL078・858・1520




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