描画性能は「Core i7-7700K」よりも上!AM4初のAPU「Bristol Ridge」レビュー

 約1年前にBTO PCの組み込み向けに販売がスタートしていたコードネーム「Bristol Ridge」で知られるデスクトップ向けのAMD第7世代APU「A12-9800E」と「A10-9700E」の店頭販売が始まった。

「Bristol Ridge」は、4つのCPUコア「Excavator」と、最多で8つのRadeon R7シリーズのGPUコアを統合するSocket AM4対応のAPU。Socket AM4対応のAPUと言えば、CPUにAMD最新アーキテクチャーの“ZEN”、GPUにハイエンドグラボに採用された“Vega”を統合した「Raven Ridge」に期待が集まっているが、秋葉原のショップスタッフからは、“予想外に売れている”という声も聞こえてきている。

 そんな、第7世代APUの「A12-9800E」(実売価格1万4600円前後)と「A10-9700E」(実売価格1万1700円前後)を触る機会を得られたので、各種ベンチマークを実行。そのパフォーマンスをチェックしてみた。

TDPが35Wの「A12-9800E」と「A10-9700E」の販売がスタート。内蔵GPUはRadeon R7で、Socket AM4に対応する

BTO採用が少なかったTDP35Wモデル

「A12-9800E」と「A10-9700E」は、TDP35Wの省電力モデル。標準でDDR4-2400に対応しており、同社のRyzenシリーズと同じく「AMD 300」シリーズのチップセットを搭載するSocket AM4マザーボードで利用できる。

 同価格帯のGPU内蔵CPUとしては、2コア/4スレッド仕様だが、動作クロックは3.9GHzと高いIntel LGA1151 CPUの「Core i3-7100」(実売価格1万3400円前後)がある。これまでの傾向的に、1コアあたりのパフォーマンスは、Intel Core iシリーズが優位な傾向にある。

 そのため、ハイパースレッディングとは言え、4スレッド対応のCore i3のほうにコスパの軍配は上がりそうだが、LGA1151プラットフォームはチップセットの刷新が迫っている。一方、Socket AM4プラットフォームは1万円前後の価格でミドルクラスのB350採用マザーボードが購入できるといったメリットがあり、買い替えるタイミングとしては優位性がある。

 さらに8コア/16スレッドのRyzen 7や次世代APU「Raven Ridge」に、そのままアップグレードできる高い将来性を持っている点など、総合で考えると「A12-9800E」と「A10-9700E」のコスパはグッとアップする。



チップセットがX370で1万円を切るMini-ITXマザーボードや、4300円前後のA320マザーボードなどもあり、Socket AM4の自作PCはコスパも抜群。格安で軽いゲームをプレイしたりする普段使いのPCや、オフィスPCをつくるのに向いている



4コア/4スレッドで、定格クロック3.1GHz(TC時3.8GHz)の「A12-9800E」。キャッシュ容量は2MBになる



コア数やキャッシュ容量などの基本スペックは同じだが、「A10-9700E」は動作クロックが定格3.0GHz(TC時3.5GHz)となる


Ryzenシリーズと同じ、SocketAM4を採用。アップグレード容易なので長く使うことができる


「A12-9800E」と「A10-9700E」のテスト用に送られてきたCPUクーラー。おなじみのフック固定になっている

 高いコストパフォーマンスで人気となっているB350チップセット採用マザーボードのASUS「PRIME B350-PLUS」(実売価格1万2000円前後)などで検証環境を構築。「A12-9800E」と「A10-9700E」を搭載して、そのパフォーマンスなどを見ていこう。

 検証環境のメモリーは、DDR4-3000対応品だがDDR4-2400(CL17-17-17)に設定。また、Windows 10の電源オプションは、「バランス」を選択している。

CPU A12-9800E(4コア/4スレッド、定格3.1GHz、TC時3.8GHz)、A10-9700E(4コア/4スレッド、定格3.0GHz、TC時3.5GHz)
マザーボード ASUS「PRIME B350-PLUS」(AMD B350、ATX)
メモリー Corsair「CMK16GX4M2B3000C15」(DDR4-3000 8GB×2)
ストレージ ウェスタンデジタル「WDS100T2B0B」(SATA M.2)
電源ユニット Seasonic「SS-750KM」(750W/80PLUS GOLD)
OS Windows 10 Pro(64bit)


今回使用したASUS「PRIME B350-PLUS」は、コスパが高いB350採用のマザーボード。APU利用時は、M.2スロットがPCIe×4 Gen2.0動作になるなどの制限はあるが、NVMe M.2 SSDも使用できる

日常用途には十分な性能

 シングルとマルチスレッド性能を計測する定番の「CINEBENCH R15」や総合ベンチマークの「PCMark 8」(Home accelerated 3.0)、「PCMark 10」(Express)を行なってCPU処理能力を見てみた。

「CINEBENCH R15」のスコアー

 まずは「CINEBENCH R15」で計測。第7世代APUは、TDPが35Wに抑えられている分、最大4GHz前後で動作するSocketFM2+世代のA10-7800シリーズからはスコア―が下がっている。CINEBENCH R15では、シングル10%、マルチ15%程度スコアー(参考記事:http://ascii.jp/elem/000/001/022/1022454/index-2.html)はダウンしている。

「PCMark 8 Home accelerated 3.0」のスコアー

 システム全体のパフォーマンスを計測する「PCMark 8」のスコア―は3000台前半。OSやPCMark 8のバージョンを含め、実行環境は異なるが、「CINEBENCH R15」と同じ傾向で、A10-7800シリーズからは8%程度スコアーがダウン(参考記事:http://ascii.jp/elem/000/001/022/1022454/index-2.html)。

 最新バージョンの「PCMark 10」では、総合スコアーに加え、さまざまなシチュエーションを計測。ここでは、アプリケーションの起動速度、ウェブブラウジング、ビデオチャット(エンコード処理)などを行なう「Essentials」、オープンソースのオフィスソフト「LibreOffice」を使った文書作成や表計算処理の能力をスコアー化する「Productivity」、写真や動画編集の性能を計測する「Digital Content Creation」の3つのテストグループを行なう「Express test」を実施してスコア―をまとめた。

「PCMark 10」のスコアー

「PCMark 10 Express test」のスコアー

 Express testの総合スコアーは2000前半と、コア数や動作クロック、GPUのパフォーマンスが影響して、各テストグループのスコアーが、いまひとつ伸びていない。メールやウェブ、ライトなオフィスワークは快適に行なえるだろうが、動画編集などクリエイティブな作業を行なうには、性能不足といったところ。

ライトゲームなら快適にプレイ可能

 続いてはグラフィック機能のRadeon R7 Graphicsのパフォーマンスを見ていこう。定番3Dベンチマークの「3DMark」は、ミドルクラスGPUを想定したDirectX11ベースの「Sky Diver」。ゲームベンチマークは定番MMORPGの「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」、そしてライト級の「ドラゴンクストX ベンチマーク」を実行している。

「3DMark Sky Diver」の総合スコアーとGraphicsスコアー

「3DMark Sky Diver Graphics test」のフレームレート

「3DMark」の「Sky Diver」の結果は、「A12-9800E」の総合スコアーが「6032」で、テスト中フレームレートが30fpsオーバーを記録。総合スコアーは、Core iシリーズが内蔵する「Intel HD Graphics」でおよそ4000~5000台。インテル第7世代の中でも自作erに人気の高い最上位モデル「Core i7-7700K」(参考記事:http://ascii.jp/elem/000/001/412/1412738/)ですら「Sky Diver」のスコア―は「5305」なので、かなり優秀な方だ。

「ドラゴンクストX ベンチマーク」のスコア―

 実ゲームのベンチマークを計測したところ描画が軽めな「ドラゴンクストX ベンチマーク」のスコア―は、最高品質のフルHD解像度で「快適」指標となる「5040」をマーク。1280×720ドットのHD画質でのスコア―は、評価が「とても快適」となる「7496」を記録。そのため、動作が軽いゲームに関しては、設定次第ではGeForceやRadeonといった外部グラフィックスボードなしでも楽しめる性能がある。少なくとも動きの少ないアドベンチャーゲームなどは、快適にプレイすることができるだろう。

「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」のスコアー

「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」の平均フレームレート

 一方、内蔵GPUの性能は高めとはいえ、描画が重めの「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」では、ややパワー不足で、快適プレイまでには至らなかった。

システム消費電力は余裕で100Wアンダーに

 最後にシステム全体の消費電力も確認してみた。OS起動後10分ほど、なにもせずに居た状態をアイドル。CPUとGPUに負荷のかかる「3DMark Sky Diver」実行中の最大消費電力を高負荷時としてまとめている。

システム全体の消費電力

 4コアCPUながら、アイドル時は20W前半となっており、CPUとGPUに負荷のかかる高負荷時でも「A12-9800E」で72.5W、「A10-9700E」では67.9Wという結果に。ネットを見たり、メール、ネット配信動画の視聴といった日常的な用途なら、システム消費電力が30から40W程度と低く抑えられるのが良かった。

用途は限られるがエントリーPC自作には十分あり

「A12-9800E」と「A10-9700E」は、店頭売り初のSocketAM4対応APUだが、アーキテクチャーやパフォーマンスは、従来のAPUから驚くような性能向上には至っていない。しかしながら、描画性能に関しては「Core i7-7700K」(実売4万2000円前後)よりも高い数値を示している点は魅力。

 Radeonなしで「Fluid Motion」を使い動画を快適に楽しめるなどのメリットもあり、ライトゲーム+動画視聴用途のPCを低予算で、今組みたい人にはオススメできる。MSI「B350M MORTAR」(実売1万3000円前後)など、DisplayPortを備えるB350マザーボードもあるので、OS込みで6万円台くらいの4K 60Hz出力PCをつくってみるのもおもしろい。

 AMD APU関連では、先日Geekbenchのサイトに「Raven Ridge」こと第8世代APU「Ryzen 5 2500U」のスコアーがアップされ、そのパフォーマンスの高さに注目が集まっている。あくまでも流出データだが、「Geekbench4.4.1」のスコアーはシングルコア「3561」、マルチコア「9421」となっている。

「Geekbench4.4.1」を「A12-9800E」で試したところ、スコア―はシングルコア“2447”、マルチコア「6252」だったので、次世代APUではマルチコアが50.6%も向上する可能性がある。デスクトップ向けはまだまだ先の話で、自作PC向けに投入されるかも不明だが、今後のAPUの動向にも注目したい。

Geekbenchのサイトにアップされた「Ryzen 5 2500U」のスコアー

「A12-9800E」で「Geekbench4.4.1」を実行した際のスコアー

(提供:AMD)

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これで解決? 「Ryzen Threadripper」早期購入者に補填

2017年09月07日 22時10分更新

文● 山県 編集●北村/ASCII.jp

 発売後、約2週間ほどで大幅値下げを敢行したAMDのハイエンドCPU「Ryzen Threadripper」。本日、日本AMDより「Threadripperに関するお知らせ」が発表。複数ショップでも告知が始まっている。



日本AMDより「Threadripperに関するお知らせ」が発表。2017年8月30日まで、Ryzen Threadripper 1950X/1920Xを旧価格で購入した人を対象にクオカードが送られる

 日本AMDの公式Twitterによると「AMD Ryzen Threadripperの件でユーザーの皆様に多大な迷惑と混乱を招きましたことを改めてお詫びいたします」として、2017年8月30日まで、Ryzen Threadripper 1950X/1920Xを旧価格で購入した人を対象にクオカードを送るという。

 クオカードは、Ryzen Threadripper 1950Xで1万8000円、Ryzen Threadripper 1920Xで1万3000円相当。国内正規代理店シールが貼られた製品が対象で、郵便番号、住所、氏名、日中連絡可能な電話番号、返信可能なメールアドレス、購入証明(レシート写真、シリアルナンバーがわかるチップ表面か箱左側面の写真、代理店シール写真が必須)を、AMD事務局にメール(amd-tr@tanoeru.co.jp)する。



ショップで掲示中の告知文。改定前に購入した人を対象にクオカードを送るという異例の展開。申し込み受付期間は9月25日まで

 なお、パソコンショップアークでは店頭やWEBで「8月10日から8月22日に当店でAMD Ryzen Theadripper 1950X、または Ryzen Threadrippeer 1920Xをご購入していただいたお客様へ」という告知を掲載。TSUKUMO eX.でも、AMD発表の告知文を店内で掲示している。申し込み受付期間は9月25日までとなるため、対象者は早めに対応したほうがいいだろう。

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やっときた! 品薄状態だった「Ryzen 7 1700」が複数ショップに再入荷

AMD「Ryzen 7 1700」

2017年03月30日 23時11分更新

文● 山県 編集●北村/ASCII.jp


 デビュー以来、売れ行き好調な「Ryzen」だが、予想以上の人気のためかCPUが品薄状態。特に「Ryzen 7 1700」の入手状況が悪かったが、ここにきて複数ショップに再入荷されている。


TDP 65Wで人気の「Ryzen 7 1700」

 発売当初は人気だった「Ryzen 7 1800X」だが、徐々に売れ筋は「Ryzen 7 1700」にシフト。先週末の秋葉原では、どのショップも完売状態で入手ができない状況だった。マザーボードの流通状況に改善の見通しが立ち始めた矢先だっただけに、売れ筋CPUの品切れは販売ショップにとっても痛手となっていた。



今週末なら購入可能な「Ryzen 7 1700」。来週になると……分かりませんという答え

 そんな「Ryzen 7 1700」が、本日になり複数ショップに再入荷。数量も「まとまった個数が入荷している」とのことで、今週末なら「Ryzen 7 1700」「Ryzen 7 1700X」「Ryzen 7 1800X」が購入できる。

 ちなみに、次の心配は「Ryzen 7 1800X」の在庫状況。次回入荷の目処が立っていないということで、現在の在庫が完売すると入手困難となる可能性がありそうだ。

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今度のつくる女は人気の「Ryzen」を使った自作イベント

2017年03月22日 22時00分更新

文● 山県 編集●北村/ASCII.jp


 今週末の26日(日)に新橋ツクモデジタル.ライフ館で恒例のつくる女イベント「AMD RyzenでPC自作しちゃうじょ♪」が開催される。時間は15時から。



今度のつくる女イベントは「AMD RyzenでPC自作しちゃうじょ♪」

 オーバークロッカーの清水氏と山下まみさんによる自作イベント。生徒(ゲスト)に川上莉央さんを迎え、AMD「Ryzen」を使った自作PCを組み上げる。当日イベントの様子は、ニコニコ生放送(番組ID:lv292001283)でも配信を予定している。「Ryzen」に興味のある人はチェックしておこう。

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Ryzenの重要な要素となったライブラリーとインターコネクト


 前回に引き続き、今回もRyzenの内部構造について解説しよう。

省電力化に大きく貢献した
複数のライブラリー

 下の画像はなにかというと、コア内部で使われているスタンダードセルライブラリー5種類の特性比較と、利用率である。

スタンダードセルライブラリー5種類の特性比較と、利用率。このグラフはflop4が基準になっている。おそらくこれがGlobalFoundriesの提供する、「一番バランスの取れた基準となる」ライブラリーなのだろう

 スタンダードセルとは、連載229回で説明したが、要するに回路を構成するための基本的な構成部品のことで、これをまとめたのがスタンダードセルライブラリーというわけだ。

 そのライブラリーだが、PPA(Power, Performance and Area)という3大パラメーターをどうバランスを取るかでいくつかの選択肢があるため、複数のライブラリーが用意されている。

 上の画像でいえば、flop1~flop5がこれにあたる。Seq Overheadは処理のレイテンシーで、これが低いほど高速である。Areaはそのセルが占める面積、Cell Powerは消費電力となる。

 これで言えば、flop1だけを使ってZenを構築すると、速度は一番上がる(他のライブラリーに比べてオーバーヘッドが30%少ないため、ラフに言えば40%ほど動作周波数が上がる計算になる)一方、消費電力は1.75倍ほど、エリアサイズは1.8倍ほどになる。

 つまりそれだけ大きなダイとなり、さらに消費電力も増えるわけだ。逆にflop5だけを使うと、オーバーヘッドは20%強増えるので動作周波数は18%ほど落ちる計算になるが、エリアサイズは5%ほど削減でき、かつ消費電力は20%強削減できることになる。

 ということで、これをどう組み合わせて、所定の性能や消費電力を実現しつつ、いかにサイズを小さくできるかというチャレンジになるわけだ。

 Zenの場合は、上の画像の折れ線が示すように、一番遅い(ただし高密度で省電力な)flop5の利用率が60以上%と一番高く、次いで標準的なflop4が20%程度で、全体の8割以上がこうした省電力向けのライブラリーで構成されている。

 次いで消費電力こそ1.6倍近いが、10%程度オーバーヘッドが少なく、エリアサイズも2割増で収まるflop3が10%程度。本当に高速だがエリアサイズ/消費電力ともに急増するflop1/flop2は合わせて10%弱でしかない。

 クリティカルパスと呼ばれる、CPU全体の動作周波数に大きな影響をおよぼす部分にのみこうした高速なライブラリーを使い、あとはなるべく省電力なライブラリーを使うという工夫が、全体としてZenの省電力化に大きく貢献したものと思われる。

性能/消費電力比は
3つの設計ポイントで最適化された

 ちなみに省電力化に関してはおもしろい話があった。下の画像は、性能/消費電力比の最適化に関する議論であるが、Zenの設計チームは3つの設計ポイントにあわせての最適化を行なったとする。

性能/消費電力比の最適化に関する議論。同じ図はISSCC 2017でも示されたが、こちらの方が説明がていねいに書かれているので、Ryzen発表時のスライドを利用した

 おそらく中心になるのがサーバーで、ここは性能/消費電力比を最大にする形での最適化となる。その一方で、ハイエンドのデスクトップなどに関して言えば、ボトルネックは配線のレイテンシーになるとしており、これを最適化する方向で設計が行なわれた。

 一方ローエンドの、例えばFanless Clientなど数WのTDPの範囲では、今度はゲート(つまりスタンダードセルそのもの)がボトルネックになりやすいとして、ここの最適化を行なったとする。

 これにより、そもそもBulldozer世代でローエンド向けに投入されたBobcatのラインナップまで、単一アーキテクチャーでカバーできるようになった、というのがAMDの主張である。

 ちなみに競合するインテルも似たようなもので、単一のCoreアーキテクチャーで4.5Wから140Wまでの幅広い範囲の製品をカバーしており、事実上Atomコアが要らない子になりつつあるのはご存知の通り。ただそれでもインテルがAtomを止めないのは、「安価なx86コア」はまだまだ利用できる範囲が大きいからだ。

 前回の繰り返しになるが、ZenとSkylakeのダイサイズを比較してみると以下のようになる。

全体(4 CPUコア+4 L2+L3) 44mm2 49mm2
3次キャッシュ 16mm2 19.1mm2
2次キャッシュ 1.5mm2×4 0.9mm2×4
CPUコア単体 5.5mm2 6.55mm2

 つまり1コア/2次キャッシュなしのCPUを作ったとしても、ダイサイズは5.5~6.6mm2とけっこう大きいことになる。それも14nmを使ってこれなので、どうしても価格は高くなる。

 それにも増してここまで大きいと、たとえばXeon Phiのように72コアものコアを入れ込むような製品には到底使えない。Skylakeコアをそのまま72コア集積すると、それだけで470mm2を超えてしまうからだ。

 また組み込み向けにも明らかに大きい。例えばARMのCortex-A72ですらTSMCの16FF+でわずかに1.15mm2でしかない。

 もっと下の、Cortex-A53やCortex-A35など組み込み向けに多用されるコアは1mm2を切る(2次キャッシュまで入れても1mm2前後)サイズに留まっており、その意味ではSkylakeコアやZenコアは組み込み向けといっても極めて用途は限られることになる。

 まだ広範な組み込み向けの製品展開を狙うインテルとしては、Atomコアは捨てられないものであり、企業再生のために市場を絞り込んでいるAMDは、Bobcatグレードの製品を維持する必要も、そのコストも持ち合わせていなかったということだろうか。

 逆にそうした市場にフォーカスしているARMは“One Size Does Not Fit All”を合言葉に、さまざまなサイズと性能のCortex-Aプロセッサーを世の中に送り出しているわけで、このあたりの対比がおもしろい。

 他にももう少し細かな話はいくつか上がっていたが、大きなテーマとして現時点でAMDから公開された情報はこのあたりである。





この連載の記事

インテル超え確実!? Ryzen 7最速ベンチその実力とは?

2017年03月02日 23時00分更新

文● 林 佑樹 編集●北村/ASCII.jp

 AMDから「Ryzen 7 1800X」と「Ryzen 7 1700X」、「Ryzen 7 1700」が編集部に届いた。というわけで、ベンチマーク結果を見ていこう。

 正直に言おう。AMDが2月21日米カリフォルニア州サンフランシスコ市内において記者発表会を行なった際に公開していたベンチマークスコアを見て、これまでのAMDの傾向から「公式発表から、7掛けくらい」「前評判だけはいい」「さんざん待たされたから、店頭で目視するまで存在を認識するつもりはない」と考えていた。筆者以外のAMDファンにも、似たようことを考えていた人はいるのではないだろうか。

Ryzen印の木箱で一式が届いた

 しかしである。AMDから届いたRyzen 7 1800X/1700X/1700でベンチマークを実行してみたところ、公式発表通りだったのだ。

 Ryzenの開発に時間がかかりすぎて、Socket AM3/AM3+のまま、Windowsのバージョンをひとつスキップするハメになったことも、Bulldozerのことも、近年は何もなくて本当にヒマだったなども、あとついでにPhenomのエラッタのことも、そのすべてを許したい。

 AMD関連記事のつど「Zen、はよ」とか書いてごめんなさい。ありがとう、Jim Keller。ありがとう、AMD。というわけで、ベンチマーク結果を見ていこう。



パッケージ パッケージから取り出したところ。Ryzenシールもちゃんとある

発表通りのCINEBENCH R15スコア

 編集部に届いたものは、「Ryzen 7 1800X」と「Ryzen 7 1700X」、「Ryzen 7 1700」。2017年3月3日から解禁されるラインナップすべてだ。概要は以下の通り。

ヒートスプレッダーに輝くRyzenの文字
コア数 8 8 8
スレッド数 16 16 16
ベースクロック 3.6GHz 3.4GHz 3GHz
Boostクロック 4GHz 3.8GHz 3.7GHz
TDP 95W 95W 65W
希望小売価格(税別) 5万9800円 4万6800円 3万8800円

 2次+3次キャッシュは共通して、20MBとされている。最近の低TDP志向からすると、Ryzen 7 1800Xと1700XのTDP 95Wは気になる数字だという人もいそうだが、これまでのAMD製CPUだとFX-9590は220W、FX-8370は125W、直接油冷の実験で活躍しているA10-6800Kは100Wだったりするので、実にカワイイものである。

 ベンチマークを見ていこう。環境は以下の通りで、CINEBENCH R15で計測した。また比較としてCore i7-6950X、Core i7-6900K、Core i7-7700K、Core i5-7600Kのハイエンドゾーンのスコアーを掲載。FX-8370は編集部倉庫に鎮座していたのでこちらも計測した。

CHINEBENCH R15の結果。5回実行した平均値を掲載している
CPU AMD「Ryzen 7 1800X」
AMD「Ryzen 7 1700X」
AMD「Ryzen 7 1700」
マザーボード MSI「X370 XPOWER GAMING TITANIUM」
メモリー CORSAIR「CMK16GX4M2B3000C15」 (PC4-24000 8GB)
ビデオカード ASUS「ROG STRIX-RX480-O8G-GAMING」(Radeon RX 480)
SSD Radeon R7 Gaming SSD
OS Windows 10(64bit)

 先の発表会でデモされていたものとほぼ同じスコアが出ている。発表会では1619だったとレポートされているが、1611が最高で、1598~1611をうろうろしていた。

 Multi実行時のクロックについては、それぞれベースクロック止まりで、ブーストクロックおよび、Extended Frequency Range(XFR)に入る様子はなかった。ともあれ、実売価格約12万円の「Core i7-6900K」を抜くスコアが強烈。

 また似た価格帯で「Core i7-7700K」と「Core i5-7600K」に対してはシングルスレッドでは思いっきり負けているが、マルチでは圧勝と、4万円前後のCPUシーンに大きな影響を与えそうだ。3月3日以降に登場するであろう、ミドルクラスやローエンドパッケージにも期待したい。



CPUクーラーはサイドフロータイプのnoctua「NH-U12S SE-AM4」 ネジ2本で固定するタイプだ



MSI X370 XPOWER GAMING TITANIUM。リテンションは開封前から同梱されていたnoctua NH-U12S SE-AM4用のものがセットされていた メモリーはCorsair「Vengeance LPX CMK16GX4M2B3000C15」